竹光始末
2009/1/4 日曜日 – 16:21:44
書名:竹光始末 (新潮文庫)
著者:藤沢周平
自分史を書くうえで、市販の書籍は参考になります。
市販の書籍は、プロの作家がプロの編集者と二人三脚で出版した本ですから、自分史作成の基本要素である、テーマ・題材・構成・文章表現、いずれも自分史を実際に書くときのお手本になるに違いありません。
自分の知識と経験を綴るカタチの自分史を書くときも参考文献は必要です。
ここではわたしが読んだ本を感想文のカタチで紹介します。自分史を書く際の参考情報になれば幸いです。
時代小説というと、小気味よい主人公とそれを支える美人、頼もしい子分格の若者、というのが思い浮かぶのだが、藤沢周平は違う。
もちろん、頼もしい健脚が主人公の小説もあるけれど、現代劇のサラリーマンのような、平凡な小心な小さな善人が迷いながら、今日より明日が幸せになりますように、と願う生き方を描いてくれると、「さすが藤沢周平!」と思う。
この「竹光始末」に書かれた6編の短編は、どれもそう。主人公は特別のヒーローではない。
それだけに人として、こんな風に生きたいという、等身大の魅力がある。
中でもいちばん魅力的なのは、「遠方より来る」の平九郎。
ぼくの好みかもしれないが、大言壮語はするわ、人を頼るわ、妙な自信を持っているわ、なんだか憎めない。
憎めないので、主人公の三崎甚平も、士官の口を探してくれる。
「食わせ物」なので、結局だめになるのだけれど、そのときの往生際が実に小気味よい。
人間、こうでなくっちゃ!