隠し剣秋風抄
2009/5/29 金曜日 – 14:59:53
書名:隠し剣秋風抄 (文春文庫)
著者:藤沢周平
自分史を書くうえで、市販の書籍は参考になります。
市販の書籍は、プロの作家がプロの編集者と二人三脚で出版した本ですから、自分史作成の基本要素である、テーマ・題材・構成・文章表現、いずれも自分史を実際に書くときのお手本になるに違いありません。
自分の知識と経験を綴るカタチの自分史を書くときも参考文献は必要です。
ここではわたしが読んだ本を感想文のカタチで紹介します。自分史を書く際の参考情報になれば幸いです。
映画『武士の一分』の原作は、この本に収められている『盲目剣谺返し』だ。
そして当然のことながら、映画と原作はちょっと違う。
何が違うのかというと、原作の三村新之丞はキムタクほどかっこよくないのだ。当たり前だけど。
その代わり、生活感があってたくましく、それまでの人生を背負った「男」であり、「武士」なのだ。
美男子となっているのだが、そんな雰囲気ではないのだ。
新之丞は妻の加世を愛している。愛しているので、「男がいる」との噂に絶えられない。
武士の一分の大義の下に、憎い間男を成敗するのだ。
多分そうに違いない。
藤沢周平の小説で描かれる、真の武士、真の男というものは、そのような自身のプライドよりもっと大切なものをもっているのだから。
新之丞にとっては、加世の存在なのだ。
離縁するのも、万一に備えて、加世に難儀が及ばせないため。
憎い間男である島村は組頭という権力者なのだから。
その証拠に、見事、島村を討ち果たし、加世が戻ってきてくれたときに、喜んでいるのだから。
プライドよりもっと大切なもの、それを見つけてこその人生なのかもしれない。