検証本能寺の変 (歴史文化ライブラリー 232)
2008/5/25 日曜日 – 17:07:47
書名:検証本能寺の変 (歴史文化ライブラリー 232)
著者:谷口克広
自分史を作成するうえで、市販の書籍は参考になります。
市販の書籍は、プロの作家がプロの編集者と二人三脚で出版した本ですから、自分史作成の基本要素である、テーマ・題材・構成・文章表現、いずれも自分史を実際に作成するときのお手本になるに違いありません。
自分の知識と経験を綴るカタチの自分史を作成するときも参考文献は必要です。
ここではわたしが読んだ本を感想文のカタチで紹介します。自分史を作成する際の参考情報になれば幸いです。
「明智光秀冤罪論―信長謀殺、光秀でない」に続いて、今回はこの本である。
本能寺、読み過ぎ!という感じもしないではないが、日本史上、最も興味をそそる事件だから何度でも読みたい題材だ。
この類の本は、歴史学者であれ、市井の歴史研究家であれ、小説家であれ、論じるに資格不問のはず。
それぞれの思いやロマンを基に、提言したい結論に都合のよい資料を探し、都合のよい解釈をするもの、それはお約束として認められているものだと思っていたら、この谷口さんはどうもそれがお気に召さないようすだ。
自説をとうとうと語るのではなく、あらゆるコトを批評するのだ。
歴史評論家というジャンルの人なのだろう。
まずは史料の評価から始まる。
次は、各時代ごとの本流の評価についての評価!
次が、有名な各論(真相はこうだ)についての評価。
しかし、結局の谷口さんの自説というモノはそれまでの他人の評価に見せる切れ味はなく、織田信長と四国方面の政策に対する方針の違いと年齢から来る将来への不安が謀反に駆り立てたのだというのだ。
当代記によると、謀反当時67歳だったそうだ。谷口さん曰く、当代記はアテにならない史料だがこの年齢だけはホントのことが書いているのだ!とのこと。
四国対策については、他の人も理由に挙げているのだが、この「検証本能寺の変」では採り上げるページ数が少ない。高齢説とともに合わせて20ページ強だ。本全体で263ページ、なんと自説の展開は本全体の1割。
他の人や史料の批判に9割を割いている。
人のことをどうどか言わずに、自分のロマンを語ってほしいと思う。
あるいは、評価に徹して、自説を言わないとか。
思い切りの悪い構成だ。
そういえば、明智光秀も思いきりの悪い武将かもしれない。
山崎の合戦では全勢力を投入せず、安土に半分の戦力を残していたとか。
羽柴秀吉は、姫路城をからにしてまで臨んだ戦なのに。