鬼火の町
2009/2/11 水曜日 – 6:47:02
書名:鬼火の町< 新装版> 文春文庫 (文春文庫)
著者:松本清張
自分史を書くうえで、市販の書籍は参考になります。
市販の書籍は、プロの作家がプロの編集者と二人三脚で出版した本ですから、自分史作成の基本要素である、テーマ・題材・構成・文章表現、いずれも自分史を実際に書くときのお手本になるに違いありません。
自分の知識と経験を綴るカタチの自分史を書くときも参考文献は必要です。
ここではわたしが読んだ本を感想文のカタチで紹介します。自分史を書く際の参考情報になれば幸いです。
松本清張といえば、社会派推理小説作家、それも大先生というイメージなのだが、松本清張にも弱点がある。
それは、3つある。
・謎解き部分がいきなり始まって、探偵役の人物がとうとうと語り始めるところが不自然。
・探偵役の人物の推理が、思い込み(しかも正解)により、執拗に裏付けを取ろうとするところ。
・警察官でも検察官でもない一般人が探偵役の場合にも、警察官や検察官と同じような捜査(取材?)をするところ。
こんなことを無名の作家がやったら、いっぺんで読む気をなくしてしまうのだが、松本清張の筆力では、ちっとも興ざめせず、最後までひきつけて読み続けさせるのだ。
それが時代小説になったら!
上記の「探偵役の人物の推理が、思い込み(しかも正解)により、執拗に裏付けを取ろうとするところ。」がごく自然な展開になるのだった。
駒形の藤兵衛は腕利きの岡っ引きだが、上司の同心川島に、担当を外される。
しかし、捜査を続けるために、お役ご免となってしまうのだが、それでも捜査を続ける。
従って、強引な捜査をする。
怪しいとにらんだ坊主を拉致する。監禁する。
事態が進展しないので、ちょっと締めて自白させる。
それで一気に解決するのだが、江戸時代のことなので、このくらい強引なことをやっていたのだろうと思える。
それに、藤兵衛は無実の人を救い、悪を暴くためにやっているのだから。
よかったよかったと最後に思って、本を閉じられるのだった。