影の地帯
2009/2/22 日曜日 – 13:25:05
書名:
影の地帯 (新潮文庫)
著者:松本清張
自分史を書くうえで、市販の書籍は参考になります。
市販の書籍は、プロの作家がプロの編集者と二人三脚で出版した本ですから、自分史作成の基本要素である、テーマ・題材・構成・文章表現、いずれも自分史を実際に書くときのお手本になるに違いありません。
自分の知識と経験を綴るカタチの自分史を書くときも参考文献は必要です。
ここではわたしが読んだ本を感想文のカタチで紹介します。自分史を書く際の参考情報になれば幸いです。
文学賞の推理小説部門に応募する際に、気をつけなければいけないのは、神様視点にならないことだ。
探偵役の人は、事件の真相や真犯人に迫る際に、読者と同じ条件で情報を得なければならない。
神様にしかわからないはずのことを知っていてはいけないし、直感でアリバイを破ったり真犯人を突き止めてはいけない。
というのは、そんなことをすると、読者が興ざめするからだ。
逆に言えば、読者が興ざめしないのなら、探偵役は神様視点でもOKだし、直感で真相を暴いてもまったく問題ないのだ。
そのお手本が、この「影の地帯」だ。
主人公田代は、飛行機でとある男女に出会う。
すると行きつけのバーでも会うわ、仕事で訪れた木崎湖でも。
すると好奇心に駆られて、出会った小太りの男をつけ、彼が受け取った荷物を調べたりするのだ。
普通そんなことはしないし、これが新人作家ならば編集者が書き直しを命ずるだろう。
そんな話では、だれも読まないから。
ところが!
そんなダメダメの展開のはずなのに、松本清張の手にかかれば、筆を使えば、その不自然さが微塵にも感じられなくなる。
主人公田代と気持ちを一つにして、「あやしいヤツ! あの荷物調べてみよう!」なんて気になるのだった。
松本清張、つくづく話の進め方がうまい。